あひる、光る、ノエル

個展

NANATASU GALLERY
2015.10.10 – 10.18

「クリスマス」と「あひる」をテーマとした展示
あひるが光るクリスマスツリー

今年の6月、京王プラザホテルでの展示につくづく嘆息した。なんと苛酷な試練に立ち向かっているひとなんだろう! と。
会場を埋めつくす、スケール感も手法も多様なアヒルの作品群。これらはすべて、「アヒルを描く自分」を客観化し、自己をパロディー化していくことなしには描けないものだと思う。それはマトリョーシカの外側を、えんえんと作り続けていくような、苛酷で終わりのない作業なはずだ。
でも、彼の作品群にはウェットなものはちっとも感じられない。アヒルたちはひたすら明るく、楽しげで朗らかだ。それは、モデルのキャッチーさによるものだけではないと思う。
それはきっと、すごく単純なことなのだ。
彼は、絵を描くことが好きで好きでたまらなくて、ずっと描き続けていたくて、描き終わりたくないひとなのだ。
なんだそんなことかと拍子抜けするかもしれない。でも、そんな一途な衝動をずっと持ち続けていることに、わたしは感動する。彼の幼少期を知っているから、なのかもしれないけれど。真っ白な画用紙を前にしたときの高揚感を、今も変わらず持ち続けているってすごいことだ。
だからきっと今日も彼は、絵画教室に通っていた光くんのまま、アヒルを描いているんだろう。その楽しくも苛酷な格闘の軌跡を見続けていられるのは、幸福なことだ。

絵本編集者/佐々木紅