2017

ペンギン塗りたて – Painted penguins
2017, 9,30-10.8
NANATASU GALLERY

 

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

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ニンバスと海 - 「明円光展 ペンギン塗りたて」をめぐって
文・山内舞子/キュレーター失礼を承知で言えば、明円光には飽きっぽい子どものようなところがある。特定のモチーフに夢中な時の集中力はすさまじいが、やがてあっという間に他の対象へと興味を移してしまうのだ。一方、彼が実際の子どもと異なるのは、やってみたいと思ったことをすべて実現できる技術と体力を備えているという点。だが着手したゲームの難なきクリアが面白くないように、それはそれで本人の悩みでもあったのだろう。
2年以上描きまくったラバーダックから卒業し、彼が抽象的な様式へと向かったのは昨年のこと。しかし、どうやら早くも今春頃にはペンギンが彼の意中になっていたようだ。あひるに続いてまたも「飛べない鳥」になるが、実はそこにはとても大きな変化が生じていた。
それが如実に感じられるのは、頭部付近でふわっと光っているような黄色の部分だ。これは無地の段階のカンヴァスにスプレーを吹き付けることで表現したもの。そこにあらかじめデザインしておいた黒いフォルムを重ねることでペンギンのイメージが立ち現れるわけだが、この順序は逆光的な印象をもたらすことにもつながっている。彼にとって新しい画材であるスプレーは目詰まり等により思わぬ場所へ飛び散ることがあるが、本人曰くそのリスクはあえて排除しないとのこと。
このように形状や位置関係を完全には制御できない方法は、筆だけで描くよりもはるかに「緊張感」と「偶然性に対する寛容さ」を必要とするものだ。しかし、作家がこれらの精神状態をうまく活かすことができれば、その表現の可能性はぐっと広がってゆくことになるだろう。
ギリシャ神話によれば地上に降り立った神はニンバス(nimbus)つまり輝く雲をまとっており、転じてこの言葉は「後光」や「魅力的な雰囲気」という意味を持つようになったという。以前作家がモチーフとしたあひるは人間のために生みだされたアノニマスな工業製品だったが、今度のペンギンたちはそれぞれ個性があり作家はその心情を汲むことも時に強いられそうだ。そこからは、人工的にコントロールされた状況から、よりリアルな世界へと彼の関心がシフトしつつあることが察せられる。この鳥たちの生息域に例えるなら、バスルームまたはプールから厳しい海原へ、といったところだろうか。でもきっと大丈夫、彼にはニンバスを備えたペンギン達がいる。